値上げのお知らせの書き方
2026/10/07
「仕入れ値がまた上がった。でも、値上げをしたらお客様が離れてしまいそうで、言い出せない」。飲食店のオーナーの方から、とてもよく聞くお悩みです。
値上げそのものよりも、「どう伝えるか」で迷っている方が多いように感じます。この記事では、商工会の経営指導員として30年、数百件の飲食店の経営改善に関わってきた立場から、値上げのお知らせの考え方と書き方を、そのまま使える例文つきでまとめました。
値上げのお知らせで大切にしたい3つの考え方
値上げのお知らせは、お客様への「おわび」ではなく、「これからもお店を続けていくためのご説明」です。書く前に、次の3つを意識しておくと文章がぶれにくくなります。
1. **正直に、短く伝える**:理由を長々と書くより、要点を短く伝えるほうが読んでもらえます。
2. **いつから・何が・いくらになるかをはっきり書く**:あいまいな書き方は、かえって不安を生みます。
3. **これからもお店が大切にすることを添える**:味、量、接客など、変えないことを書くと安心につながります。
なお、量や質をこっそり下げて価格を据え置く方法はおすすめしません。お客様は意外と気づくものですし、信頼を失うと取り戻すのに時間がかかります。変えるときは、きちんとお知らせしましょう。
書く前に整理しておきたいこと
いきなり文章を書き始める前に、次の項目を紙に書き出してみてください。
| 整理する項目 | 書き出す内容の例 |
|---|---|
| 対象のメニュー | 全メニューか、一部のメニューか |
| 新しい価格 | 税込でいくらになるか |
| 実施日 | 何月何日から新しい価格になるか |
| 理由 | 食材費、光熱費、包材費などの上昇 |
| 変えないこと | 使う食材、量、手づくりの工程など |
| 伝える場所 | 店頭、メニュー表、SNS、Googleビジネスプロフィールなど |
ここが整理できていれば、お知らせの文章は半分できたようなものです。
価格表示で気をつけたいこと(総額表示)
新しい価格をメニュー表や店頭に書くときは、**税込価格(総額)で表示すること**が消費税法で義務付けられています。国税庁の案内では、お客様に対してあらかじめ価格を表示する場合が対象で、店頭の表示、チラシ、広告など媒体は問わないとされています。
表示の仕方は、たとえば「11,000円」「11,000円(税込)」「11,000円(税抜価格10,000円)」など(国税庁の表示例)、税込の金額がはっきり分かる形であれば認められています。
店内飲食とテイクアウトで税率が異なる場合の表示方法など、細かい点は税理士や税務署に確認しておくと安心です。
そのまま使える値上げのお知らせ例文
ここからは、使う場面に合わせた例文です。「○○」の部分をお店に合わせて書き換えてください。
**例文1:店頭・店内の貼り紙用(ていねいな文章)**
> 価格改定のお知らせ
>
> いつも当店をご利用いただき、誠にありがとうございます。
> 食材や光熱費などの値上がりが続くなか、これまで価格を据え置いてまいりましたが、品質を保ちながら営業を続けるため、○月○日より一部メニューの価格を改定させていただくことになりました。
> これからも、○○(例:地元の食材を使った手づくりの味)を大切に、心をこめてお料理をお出しいたします。
> 何卒ご理解を賜りますよう、お願い申し上げます。
>
> 店主 ○○
**例文2:SNS・Googleビジネスプロフィール用(短めの文章)**
>【価格改定のお知らせ】
>○月○日より、一部メニューの価格を改定いたします。
>食材や光熱費の値上がりを受け、品質を守るための判断です。
> 量や味はこれまでどおり。これからもよろしくお願いいたします。
**例文3:常連のお客様に口頭で伝えるとき**
> 「実は○月から、少しだけお値段を上げさせていただくことになりまして。材料が上がってしまって……。でも、量と味はこれまでどおりがんばります。」
口頭では、言い訳を重ねるより、短く正直に伝えるほうが気持ちよく受け止めてもらいやすくなります。
お知らせを出すタイミングと順番
値上げのお知らせは、実施日の直前ではなく、少し前から出しておくのがおすすめです。目安として、次の順番で進めると慌てずに済みます。
1. **実施日の2〜4週間前**:店頭とSNSでお知らせを出す
2. **同じころ**:Googleビジネスプロフィールのメニューや投稿も更新の準備をする
3. **実施日の前日まで**:新しいメニュー表を印刷し、レジやPOSの価格設定を変更する
4. **実施日**:メニュー表を差し替え、ホームページやSNSの価格もそろえる
5. **実施後しばらく**:お客様の反応や売上の動きを見て、記録しておく
店頭とネット上で価格がちがったままになっていると、お客様を混乱させてしまいます。更新もれがないか、一覧にしてチェックしましょう。
値上げと一緒に考えたい「選んでもらう工夫」
値上げをするときは、ただ価格を上げるだけでなく、お客様に「この値段なら納得」と感じてもらえる工夫も一緒に考えてみてください。
- **全品一律でなく、メニューごとに考える**:原価が大きく上がった品と、そうでない品を分けて見直す
- **価格を据え置く品を残す**:お店の「顔」になるメニューは価格を守る、という考え方もあります
- **こだわりを見える形にする**:産地や手づくりの工程をメニュー表に一言添える
- **少し量の多いメニューや、セットを用意する**:選ぶ楽しさを増やす
どのメニューをいくら上げるかは、原価率や売れ数を見ながら決めると判断しやすくなります。数字の見方に迷ったら、ひとりで抱え込まずに相談してみてください。
明日からできる3つの手順
最後に、明日から取りかかれる手順をまとめます。
1. **主なメニューの原価を書き出す**:今の仕入れ値で、1品あたりいくらかかっているかを確認する
2. **値上げするメニューと価格を決める**:税込の新価格と実施日を決める
3. **例文をもとにお知らせを書く**:店頭用とSNS用の2種類を用意する
まとめ
値上げのお知らせは、お店を続けていくための大切なご説明です。「いつから・何が・いくらになるか」をはっきり書き、変えないことを添えて、正直に短く伝えましょう。価格表示は税込の総額表示にすること、店頭とネットの表示をそろえることも忘れずに。
値上げは不安なものですが、きちんと準備をして伝えれば、お客様との信頼を守りながら進めることができます。
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