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飲食店の損益分岐点の計算方法をやさしく解説

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損益分岐点の計算方法

損益分岐点の計算方法

2026/10/08

「毎月、忙しく営業しているのに、なぜかお金が残らない」「結局、月にいくら売れば赤字にならないのか分からない」。飲食店のオーナーさんから、とてもよく聞く悩みです。
この悩みに答えてくれるのが**「損益分岐点(そんえきぶんきてん)」**という考え方です。むずかしそうな言葉ですが、計算は電卓1つでできます。この記事では、飲食店の数字に当てはめながら、損益分岐点の出し方と使い方を順番にご説明します。

損益分岐点とは「赤字と黒字の境目の売上」

損益分岐点とは、**利益がちょうどゼロになる売上高**のことです。売上がこの金額を上回れば黒字、下回れば赤字になります。
この金額が分かると、「今月はあと○○円で黒字になる」「1日あたり何人のお客様に来ていただければよいか」が見えるようになります。なんとなくの感覚ではなく、目標を数字で持てるのが大きな利点です。

まず費用を「固定費」と「変動費」に分ける

計算の前に、お店の費用を2つに分けます。中小企業基盤整備機構のJ-Net21では、次のように説明されています。
- **変動費**:売上に比例してかかる費用(例:原材料や仕入商品)
- **固定費**:売上にかかわらず、一定にかかる費用(例:正社員の給与や店舗の家賃)
飲食店に当てはめると、たとえば次のような分け方になります。
| 区分 | 飲食店での主な例 |
|---|---|
| 変動費 | 食材費、ドリンクの仕入れ、テイクアウト容器、カード決済などの手数料 |
| 固定費 | 家賃、正社員の給与、リース料、保険料、借入金の利息、基本料金のかかる通信費 |
迷いやすいのが、アルバイト・パートの人件費と水道光熱費です。売上に合わせてシフトを細かく調整しているなら変動費に近いのですが、最初は**迷ったものは固定費に入れておく**とシンプルで、損益分岐点が少し高めに出るので安全側の見方になります。帳簿上の科目の分け方で迷うときは、顧問の税理士さんに確認しておくと安心です。

損益分岐点の計算式

費用を分けたら、次の式に当てはめます。
**損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 - 変動費率)**
「変動費率」は、**変動費 ÷ 売上高**で出します。また「1 - 変動費率」は**限界利益率**と呼ばれ、売上から変動費を引いた残り(限界利益)が売上の何割かを表します。この限界利益で固定費をまかなえれば、赤字にはなりません。

仮の数字で計算してみましょう

ここでは計算の流れを分かりやすくするために、**説明用の仮の数字**を使います(実在のお店の数字ではありません)。
- 1か月の固定費:90万円(家賃・人件費・リース料などの合計)
- 変動費率:35%(食材・ドリンクの仕入れや手数料などが売上の35%) 計算すると、次のようになります。
| 項目 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 限界利益率 | 1 - 0.35 | 0.65(65%) |
| 損益分岐点売上高(月) | 90万円 ÷ 0.65 | 約138万円 | | 1日あたり(月25日営業) | 約138万円 ÷ 25日 | 約5.5万円 |
| 1日の必要客数(客単価1,500円) | 約5.5万円 ÷ 1,500円 | 約37人 |
「月に約138万円」と聞くより、「1日約37人」と置きかえると、毎日の営業の目標として実感がわきやすくなります。

「赤字にならない」の次は「目標の利益」から逆算する

損益分岐点は、あくまで利益ゼロのラインです。借入金の返済や設備の買い替え、オーナーご自身の生活費を考えると、利益を残す目標も必要です。J-Net21では、目標利益を出すための売上高を次の式で説明しています。
**必要売上高 =(固定費 + 目標利益)÷(1 - 変動費率)**
先ほどの仮の数字で、月20万円の利益を目標にすると、(90万円+20万円)÷0.65=**約169万円**です。
あわせて見ておきたいのが**安全余裕率**です。
**安全余裕率 =(売上高 - 損益分岐点売上高)÷ 売上高 × 100%**
これは「今の売上から、どこまで下がっても赤字にならないか」を表す数字です。たとえば売上160万円なら、(160万円-約138万円)÷160万円で約14%。この数字が小さいほど、売上が少し落ちただけで赤字になりやすい状態です。

損益分岐点を下げる3つの方向

計算してみて「思ったより高い」と感じたら、次の3つの方向で考えます。
1. **固定費を見直す**:使っていない契約やリース、保険の内容、通信費などを一つずつ確認します。
2. **変動費率を下げる**:仕入れ先や仕入れ量の見直し、仕込み量の調整による食品ロスの削減などです。ただし、お客様に知らせずに量や質を下げるのはおすすめしません。信頼を失えば、結果的に売上が下がってしまいます。
3. **限界利益の大きい商品を売る**:ドリンクやサイドメニューなど、原価率の低い商品をおすすめしやすくする工夫です。値上げをする場合も、理由をきちんとお知らせしましょう。
たとえば仮の数字で変動費率を35%から33%に下げると、損益分岐点は90万円÷0.67で**約134万円**になり、約4万円下がります。小さな改善でも、境目のラインは動きます。

明日からできる5つの手順

1. 直近3か月分の帳簿や試算表を用意する
2. 費用を「固定費」と「変動費」に分ける(迷ったら固定費へ)
3. 3か月の合計で「変動費 ÷ 売上高」を出し、変動費率を求める
4. 1か月あたりの固定費を式に入れて、損益分岐点売上高を出す
5. 営業日数と客単価で割り、「1日の売上目標」と「1日の客数目標」に直して、レジ横など目につく場所に書いておく
あとは毎月、実際の売上と比べるだけです。1回出して終わりではなく、家賃や仕入れ値が変わったら計算し直しましょう。

まとめ

- 損益分岐点は「利益がちょうどゼロになる売上高」
- 計算式は「固定費 ÷(1 - 変動費率)」
- 1日あたりの売上と客数に直すと、毎日の目標になる
- 目標利益を足した必要売上高や、安全余裕率もあわせて見る
- 固定費・変動費率・売れる商品の3つの方向で、境目のラインは下げられる
私は商工会の経営指導員として30年、数百件の飲食店の経営改善に関わってきましたが、まず「自分のお店の境目の数字」を知ることが、次の一手を考える出発点になります。「費用の分け方が分からない」「計算してみたけれど、どこから手をつければいいか迷う」という方は、お気軽にご相談ください。
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