メニュー表の作り方
2026/10/12
「おすすめを食べてほしいのに、注文はいつも同じ定番ばかり」「メニュー表は開業したときのまま、何年も変えていない」――飲食店のオーナーさんから、こうしたお悩みをよく伺います。
メニュー表は、お客様がお店で一番長く見る「紙の営業担当」です。料理の味やお店の雰囲気がよくても、メニュー表で魅力が伝わらなければ、お客様は「いつもの」や「無難なもの」を選びがちです。今回は、お店が本当に売りたい商品を、お客様に気持ちよく選んでもらうためのメニュー表の作り方を、順番にご紹介します。
メニュー表は「選びやすさ」と「伝わること」が大切
メニュー表の役目は、料理の名前と値段を並べることだけではありません。大きく分けると、次の2つです。
- お客様が迷わずに、満足できる一品を選べるようにすること
- お店が自信を持っておすすめしたい商品の魅力を伝えること
お店のおすすめが、お客様にとっても「選んでよかった」と思える商品なら、どちらにもうれしい結果になります。大切なのは、お客様をうまく誘導することではなく、「良いものを分かりやすく伝える」ことです。
まず「売りたい商品」をはっきり決める
メニュー表を作り直す前に、どの商品を一番に見てもらいたいのかを決めます。おすすめの基準は、「よく出ているか(人気)」と「1品あたりのもうけが大きいか(利益)」の2つで考えると整理しやすくなります。
| 分類 | 人気 | 1品あたりの利益 | メニュー表での考え方 |
|---|---|---|---|
| 看板商品 | 高い | 大きい | 一番目立つ場所に置き、写真や説明を充実させる |
| 人気だが利益が小さい商品 | 高い | 小さい | 位置は無理に目立たせず、原価や盛り付けの見直しも検討する |
| 利益は大きいが目立たない商品 | 低い | 大きい | 見せ方や説明を工夫して、魅力を伝え直す |
| 人気も利益も小さい商品 | 低い | 小さい | 続けるか、内容を変えるか、やめるかを考える |
この分け方は、一般に「メニュー分析」と呼ばれる考え方を、分かりやすくまとめたものです。ここで言う「利益」は、売値から材料費を引いた「1品あたりに残るお金」のことです。原価率が低いかどうかだけで決めず、実際に残る金額で比べるのがポイントです。
売りたい商品を目に留めてもらう見せ方
売りたい商品が決まったら、メニュー表の中で目に留まるように工夫します。
- **場所**:メニューを開いて最初に目に入りやすい場所(ページの上の方や、見開きの中央付近など)に置く。どこが見られやすいかはメニューの形によって違うので、お客様の目線を想像しながら決める
- **囲み・余白**:おすすめ商品だけを枠で囲んだり、周りに余白をとったりして、ほかの商品と区別する
- **写真**:写真を載せるなら、売りたい商品にしぼる。全部に写真を付けると、かえって目立たなくなる
- **印**:「店主のおすすめ」「当店の看板」などの短い言葉を添える
注意したいのは、目立たせる商品を増やしすぎないことです。あれもこれも強調すると、結局どれも目立たなくなります。1つのページ、1つのカテゴリーにつき、おすすめは1〜2品くらいにしぼると伝わりやすくなります。
料理名と説明文で「食べたい理由」を伝える
同じ料理でも、名前と短い説明で印象は大きく変わります。お客様が知りたいのは、「どんな味か」「何が特別なのか」です。
- 使っている食材や産地(例:地元でとれた野菜、近くの港に揚がった魚 など、事実として言えるもの)
- 調理のこだわり(例:店で毎朝仕込むだし、じっくり煮込んだソース など)
- 味や食感のイメージ(例:香ばしい、ほろっとやわらかい、さっぱり)
説明文は1〜2行、30〜50字くらいが読みやすい目安です。ここで大切なのは、**実際の料理と違うことを書かない**ことです。産地や量、使っている食材が説明と違えば、お客様の信頼を失ってしまいます。仕入れ先や食材を変えたときは、メニュー表の説明もあわせて直しましょう。
値段の並べ方と品数の考え方
メニュー表では、値段の見せ方も選びやすさに関わります。
- **品数をしぼる**:選択肢が多すぎると、お客様は迷い、結局いつもの商品を選びがちです。あまり出ていない商品を整理すると、メニュー全体が見やすくなり、仕込みや食品ロスの負担も軽くなります
- **値段の段階を用意する**:同じカテゴリーの中に、手ごろな商品と、少し高めでも満足感のある商品を並べると、お客様が自分に合ったものを選びやすくなります
- **値段だけが目立たないようにする**:値段を右端にそろえて点線でつなぐ並べ方だと、値段の比較ばかりに目が行きやすくなります。料理名と説明のすぐ後ろに値段を書くなど、料理の魅力が先に伝わるようにします
高めの商品を置くときは、「その値段に見合う理由」を説明文で伝えることが大切です。中身を変えずに値段だけを上げたように見せたり、量を減らしたことを知らせずに同じ値段で出したりするのは、お客様をだますことになるので避けましょう。
メニュー表で気をつけたい表示のルール
メニュー表には、守るべき表示のルールもあります。
- **値段は税込の総額で表示する**:財務省によると、消費者に商品やサービスを売る課税事業者が値段を表示するときは、消費税を含めた支払総額を表示することが義務付けられています。値札や店内表示、チラシ、インターネットの広告なども対象です。税込・税抜の表示方法で迷うときは、税理士や最寄りの税務署に確認しましょう
- **アレルギーの情報**:東京都の保健所の案内では、飲食店で提供する食品には、容器包装された食品のようなアレルゲン情報の提供の義務はないものの、健康被害を防ぐために情報提供の充実が求められている、とされています。メニュー表に載せるかどうか、どう載せるかは、お店の調理の状況(同じ器具を使うかなど)によって変わるので、保健所に相談しながら進めると安心です
明日からできる5つの手順
1. **直近1〜3か月の売れた数を書き出す**:レジやPOSの記録、伝票から、商品ごとの注文数をまとめます
2. **1品ごとの「残るお金」を計算する**:売値(税抜)から材料費を引き、1品あたりの利益を出します
3. **4つに分類して、看板商品を1〜2品決める**:上の表に当てはめ、一番見てもらいたい商品を決めます
4. **看板商品の場所・説明・写真を直す**:まずは全部を作り直さず、おすすめ部分だけを変えてみます
5. **1か月後に注文数を比べる**:変える前と後で、看板商品の注文数がどう変わったかを確認し、次の改善につなげます
手書きのおすすめボードや、メニューに差し込む一枚の紙からでも始められます。
まとめ
メニュー表は、お店の想いとおすすめを、お客様に伝える大切な道具です。
- まず「人気」と「1品あたりの利益」で、売りたい商品をはっきり決める
- 売りたい商品は場所・囲み・写真・短い言葉で目立たせる。ただし、しぼり込む
- 料理名と説明文で「食べたい理由」を、事実に沿って伝える
- 値段は税込の総額で表示し、アレルギー情報は保健所に相談しながら整える
- 少しずつ変えて、数字で効果を確かめる
「どの商品をおすすめにすればいいか分からない」「数字の整理から手伝ってほしい」という方は、お気軽にご相談ください。商工会の経営指導員として数百件の飲食店の経営改善を支援してきた経験をもとに、一緒に考えます。
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